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2023.03.08
まずはじめに、みなさんはむし歯になった時、「歯の神経を取らなければいけません」と
歯医者さんで言われた経験はありませんか?
実はむし歯には種類があって、それぞれ進行具合によって治療方法が異なります。
また、むし歯の進行具合はC0~C4と表現されることが多いです。
そもそもむし歯はなぜ起こるかというと、
口腔内の常在菌である‘ミュータンス菌’と呼ばれる細菌などが糖分を餌に酸を産生して
歯を溶かすことで生じると言われています。
特に上記の分類におけるC3(歯の神経までむし歯が進行している状態)では、
神経が細菌に感染しており、
歯髄炎(歯の神経が炎症を起こしている状態)や
根尖性歯周炎(神経が死んでしまって歯の根の先に膿が溜まっている状態)などが生じます。
こうした場合には、「根管治療」(歯の根の治療)が必要となります。
以上のことから、「歯の根(神経)の病気」の原因は‘‘細菌感染’’であることがわかります。
それではいったい、根管治療とはどのような治療なのでしょうか。
根管治療の目的は、歯の根の中の感染源となっている細菌をできる限り取り除くことです。
まず私たちの唾液の中には前述したミュータンス菌をはじめ、様々な細菌が存在しています。
しかしながら根管治療中に唾液が混入したり、
唾液に汚染された器具や材料が治療中の歯に触れてしまったら、
せっかく治療をしているのにも関わらず歯の根の中に新たな細菌が侵入し、
再感染する可能性が高くなります。
上記のことから根管治療を行う場合には、
唾液などに汚染されない環境作りが重要となります。
このような環境下で行う処置のことを「無菌的処置」と呼ぶこともあります。
その無菌的処置を行う環境作りにおける代表的な方法に
「ラバーダム防湿法」と呼ばれるものがあります。
☆ラバーダム防湿法について
ラバーダム防湿法とは、
患歯のみを露出させ他の組織と触れ合わないようにして、治療中の歯を清潔に保つための方法です。
下に示すような器具を使って
全体像としてはこのような感じに♪
歯の部分はこのような感じに♪
歯の周りに金具を引っ掛けて、ゴムのシートを張っていきます。
①術野を唾液や血液などから隔離し、清潔な環境で治療できる
②器具や薬剤、切削片などの誤飲・誤嚥を防ぐことができる
③口唇や頬粘膜などの軟組織を排除・保護できる
④術野を明視化できる
ことなどが挙げられます。
また、ある文献では、
ラバーダムを使用することで歯科治療中の微生物の拡散を90~98%減少させることができると報告しているものもあります。(The efficacy of the rubber dam as a barrier to the spread of microorganisms during dental treatment, Michael A., JADA, Vol. 119, July 1989, 141-144)
日本歯内療法学会が2009年に発表している歯内療法ガイドラインでは
「すべての根管の清掃・形成・消毒・閉鎖は常にラバーダム防湿下で無菌的処置下で行われるべきである」
と明記されています。
また、米国歯内療法学会(AAE)の2017年のPosition Statementでは
「ラバーダム防湿法は標準的な治療であり、非外科的歯内療法には不可欠である」
欧州歯内療法学会(ESE)の2006年のConsensus Reportでも
「根管治療を行う際には患歯はラバーダムで隔離し患歯とラバーダムは消毒する必要がある」
と明記されており、世界的にも根管治療時のラバーダム防湿の重要性が示されていることがうかがえます。
しかしながら、日本におけるラバーダム防湿の使用率について浅井らが2021年に報告した文献によると、
根管治療時に歯内療法学会専門医では60.0%がラバーダム防湿を必ず行うのに対して、
一般歯科医では14.1%が必ず行うと報告されています。 (歯内療法におけるラバーダム防湿に関する調査, 浅井知宏,日歯内療誌,42(3): 166~173, 2021)
つまり根管治療の際に必ずラバーダム防湿を行う一般歯科医院はかなり少ないことがわかります。
ラバーダムを使用しない理由としては、
保険診療ではコストが見合わなかったりラバーダムの装着に時間がかかるなどの理由が考えられます。
しかし、先程も申し上げたように根管治療でのラバーダム防湿は必須です。
そのため当院では保険診療でもラバーダム防湿を用いて診療しております。
ご安心くださいませ。
さてここで、ラバーダムについてよく頂く質問についてご紹介します。
Q1. ラテックスのアレルギーがあるのですが、ラバーダムを使った治療はできませんか?
A. ラテックスフリーのラバーダムシートもご用意しておりますので、安心して治療していただけます。
Q2. 口を覆われての治療に不安があります、苦しくないですか?
A.マスクをしているような感覚に似ています。鼻呼吸の方が楽ではありますが、口でも鼻でも呼吸可能です。
Q3. 痛くないですか?
A.多少の圧迫感があるかもしれませんが、麻酔をしてから行うため痛みを感じることなく装着していただけます。
Q4. ラバーダムをしたら口を開けにくくならないですか?
A.問題ありません。患者さまの中には、ラバーダムをした方が口を開けやすいとおっしゃる方や
安心して寝てしまう方もおられます。
お口を開けるのがしんどい方には、開口を補助する器具もございますので、必要に応じて使用します。
いかがでしたか?主に根管治療について述べてきましたが、
ラバーダム防湿法は根管治療の他にも詰め物の治療等でも使用することがあります。
ご不明点などがございましたら、お気軽にご相談くださいね♪
記事作成者:歯科医師 天羽萌
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